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「冬にこたつを置いて過ごしたくて、和室をつくりました」。@_11_aug_ さんの家は、部屋から考えたのではなく、やりたいことから逆算して部屋を作った平屋です。そしてもうひとつ、大開口とタイルデッキで外とつながるリビング。32坪の中に、内と外の居場所が両方あります。
間取りの打ち合わせでは、たいてい「和室は要りますか?」という聞かれ方をします。部屋の名前が先にあって、要る/要らないを答える。この進め方だと、和室は「一応あったほうがいい客間」に落ち着きがちで、結果として年に数回しか使われません。
この家は逆です。冬にこたつで過ごしたい。だから和室を作った。用途が先にあって、それを収める器として部屋がある。だからこの和室は、確実に毎年冬に使われます。
そしてもう一行、「大開口にタイルデッキを設けて、外との繋がりを感じるリビング」。冬はこたつで内にこもり、それ以外の季節は外へ開く。季節ごとに居場所が変わる家——いえスタ編集部はこの家をそう読みました。
施主のこだわりポイント
冬にこたつを置いて過ごしたくて、和室をつくりました。
大開口にタイルデッキを設けて、外との繋がりを感じるリビングにしたのがお気に入りです!
— @_11_aug_ さんの投稿より、編集部が引用
編集部メモ:この家を一言で言うと
「やりたいことから部屋を決めた平屋」。
この家のこだわり2行には、共通する構造があります。どちらも「こうして過ごしたい」が先にあって、そのための設えが後にあるという順番です。
こたつで過ごしたい → 和室。外とつながりたい → 大開口とタイルデッキ。部屋の名前や設備の名前から入っていない。この順番で決めた家は、住んでから「これ要らなかったな」が出にくくなります。過ごし方が先に決まっているからです。
2人暮らしで32坪の平屋、3LDK。面積にも部屋数にも余裕があるぶん、その余裕を「季節ごとの居場所」に使ったと読めます。冬は和室、春から秋はデッキ。同じ家の中に、時期によって主役が入れ替わる場所がある。これは面積の使い方として、かなり贅沢で気持ちのいい配分だと思います。
編集部が注目した3つのポイント
1. 「こたつを置きたい」から和室を決めるという順番
和室を作るかどうかで迷う人はとても多い。理由は使い道が具体的に想像できないからです。客間として作れば年に数回、子どもの昼寝スペースとして作れば数年で不要になる。用途が曖昧な部屋は、いずれ物置になります。
この家は「冬にこたつを置いて過ごす」という、はっきりした用途から出発しています。これなら毎年必ず使われますし、必要な広さも自然に決まります。こたつ+人が座る余白+通路。4.5帖あれば足り、6帖あれば余裕がある。用途が決まると、寸法も決まります。
こたつを前提にするなら、設計で押さえておきたい点が3つあります。①コンセントの位置(こたつを置く場所の床近く、または畳の下に配線)②畳の種類(こたつの熱と摩擦に耐えるもの)③リビングとの連続性。
とくに①は見落とされがちです。部屋の隅にしかコンセントがないと、こたつのコードが部屋を横切ります。和室の中央付近に電源を用意できるか、設計時に相談してください。②については、い草の畳は日焼けと擦れに弱いので、毎日使うなら和紙畳や樹脂畳のほうが長持ちします。
2. 大開口+タイルデッキで、リビングを外へ延長する
ウッドデッキではなくタイルデッキ、という選択に注目したいところです。タイルデッキは木より初期費用が高い一方、塗装などのメンテナンスがほぼ不要で、色や質感も長く変わりません。
加えて、室内の床とタイルの高さを揃えると、リビングが外へそのまま続いて見えます。大開口を開け放ったとき、床が途切れずにつながる。これが「外との繋がりを感じるリビング」の正体です。木のデッキでも同じことはできますが、素材が変わるぶん段差以外の切れ目も見えます。
再現するときのポイントは高さと排水です。室内床とデッキの高さを揃えると視覚的には理想ですが、雨水が室内側に入りやすくなります。わずかな水勾配と、サッシ下の排水(グレーチングなど)をセットで設計してもらってください。
もう一点、夏の照り返し。タイルは熱を蓄えるため、真夏の日中は素足で歩けないほど熱くなることがあります。軒の出、庇、あるいはシェードで日射を遮る計画を一緒に立てておくと、使える時間が長くなります。この家が平屋であることは、深い軒を出しやすいという点で有利に働きます。
3. 独立型キッチンという、外に開く家での選択
大開口で外とつながるリビングを持つ家が、キッチンは独立型(セパレート)を選んでいます。開くところと閉じるところを分けている構成です。
リビングは外へ開き、キッチンは閉じる。一見すると矛盾しているようですが、実は理にかなっています。大開口のリビングは外から見られる可能性がある空間でもあります。デッキで過ごす来客からも、庭からも見える。そこにキッチンの手元が含まれていると、常に片付けを意識することになります。
独立型キッチンのデメリットは、配膳距離と採光です。ダイニングまで3歩以内が理想、5歩を超えるとストレスになります。また、独立させると窓が取りにくく、日中でも照明が必要な部屋になりがちです。
この家は平屋なので、キッチンにも窓を取りやすいという利点があります。2階建てだと1階の奥まった位置に窓が取れないことがありますが、平屋なら外周に面する機会が多い。独立型キッチンと平屋の相性は、意外に良いと言えます。
この家から学べる、部屋を決める前にやるべき3つのこと
判断軸1:部屋の名前ではなく「過ごし方」から決める
「和室は要りますか」ではなく「冬はどこでどう過ごしたいですか」。質問を変えるだけで、答えの精度が上がります。
過ごし方から入ると、必要な広さも、床の仕上げも、コンセントの位置も自動的に決まります。逆に部屋の名前から入ると、標準的な寸法の部屋ができて、使い道はあとから探すことになります。「この部屋で何をするか」を一文で言えない部屋は、作らないほうが安全です。
判断軸2:季節ごとに主役が変わる場所をつくる
一年中同じように使う場所ばかりだと、家は単調になります。冬はこたつのある和室、春から秋はデッキ——この家のように季節で居場所が入れ替わると、同じ面積でも暮らしの変化が生まれます。
屋外空間はその代表です。デッキ、テラス、土間。延床面積に算入されないのに、暮らしの幅を広げてくれるという点で、費用対効果の高い投資でもあります。
判断軸3:開く場所と閉じる場所を、意識的に分ける
全部を開放的にすると、落ち着かない家になります。逆に全部を閉じると、開放感がなくなる。どこを開き、どこを閉じるかを最初に決めておくと、迷いが減ります。
この家はリビングを開き、キッチンを閉じました。開く場所は視線が抜けて気持ちよく、閉じる場所は生活の実務を引き受ける。この役割分担があると、開放的な家でも生活感に悩まされません。
延床32坪・土地110坪という条件を読む
延床32坪の平屋に、土地110坪。建物に対して土地が非常に大きい配分です。この余裕が何を可能にしているかを見ていきます。
32坪の平屋3LDKは、和室を足せるサイズ
平屋3LDKの中心帯は25〜32坪。32坪はその上限にあたり、2人暮らしなら和室を1室足しても余裕があります。3LDKのうち1室が和室、という構成でしょう。
これが4人家族だと同じ配分は取れません。和室を「毎日使う場所」として持てるのは、人数に対して面積の余裕があるからです。人数が多い家で和室を検討するなら、リビングと一続きの小上がりにして兼用させるほうが現実的です。
土地110坪なら、デッキと庭と駐車が全部入る
建ぺい率60%なら建築面積は66坪まで。平屋32坪なら、78坪ぶんが屋外として残る計算です。タイルデッキ、庭、駐車2〜3台、物置。すべて無理なく配置できます。
大開口を活かすには、その窓の外に十分な奥行きがあることが条件になります。隣家が迫っていると、大開口は「開けられない窓」になってしまう。110坪という土地が、この家の主題を成立させています。
タイルデッキは外構費として別枠で見る
デッキは外構工事なので、建物本体の見積もりには含まれないことがほとんどです。タイルデッキは木製デッキより初期費用が高く、面積に比例して増えます。
そのかわり、塗装などの定期メンテナンスがほぼ不要で、10年20年のスパンで見ればコストは逆転することもあります。「毎日使う場所」として計画するなら、この差は大きい。資金計画の段階から外構費を分けて確保しておいてください。
2人暮らしが、この家の設計を再現するには
2人で32坪3LDK。人数に対して余裕のある配分だからこそ、その余裕をどう使うかが問われます。
和室は「毎日使う理由」を1つ決めてから作る
こたつ、読書、昼寝、ヨガ、来客。何でもいいので、毎年必ず発生する用途を1つ決めてください。それが決まれば、広さも仕上げも自動的に決まります。
逆に「一応あったほうがいい」で作った和室は、数年で物置になります。この家の「冬にこたつ」は、その基準を満たしている良い例です。
デッキは「そこで何をするか」で仕上げを選ぶ
食事をするならテーブルと椅子が置ける広さ(最低2.5〜3畳)と、掃除しやすい仕上げ。植物を置くなら水やりの排水。洗濯物を干すなら日当たりと物干し金物。用途によって必要な条件が変わります。
タイルは掃除がしやすく、水にも強い。食事や植物に向く仕上げです。素足でくつろぐ時間が長いなら、夏の熱を考えて日射遮蔽をセットで計画してください。
平屋の大開口は、防犯とセットで考える
平屋はすべての開口が地上レベルにあるため、2階建てより防犯上の配慮が必要です。とくに土地が広く、隣家から離れている環境ではなおさらです。
シャッター、防犯ガラス、センサーライト、外構の見通し。植栽で目隠しをする場合も、死角を作らない配置を意識してください。デッキがあると、そこが足場になる可能性もあります。設計段階で相談しておくのが確実です。
住友林業で建てるときに押さえたいこと
住友林業は木質構造と設計提案力を強みとする住宅会社です。大開口と和室を持つ平屋という構成で、確認しておきたい点を挙げます。
大開口の構造的な条件と、性能への影響を聞く
壁を大きく開ければ、そのぶん耐力壁が減ります。どこまで開けられるのか、開けた場合の耐震等級はどうなるのかを、数字で確認してください。木質構造の会社は大開口の実績を持っていることが多いので、実例プランを見せてもらうのが早道です。
あわせてUA値・C値の実測値も。大開口は熱の出入りが大きいため、性能が伴わないと冬に寒く夏に暑い家になります。この家がZEH対応であることは、その前提として意味があります。
和室の畳・コンセント・段差を図面で決める
こたつを毎日使うなら、畳の種類(和紙畳・樹脂畳か、い草か)、コンセントの位置、リビングとの段差の有無——この3点を図面に落としてもらってください。とくにコンセントは、部屋の隅だけだとコードが部屋を横切ります。
フラットにするか小上がりにするかは、将来こたつ以外の用途に転用する可能性を含めて決めてください。フラットのほうが転用は容易です。
タイルデッキを本体見積もりと分けて出してもらう
デッキは外構工事です。室内床との高さ関係、水勾配、サッシ下の排水、そして日射遮蔽(軒の出)を建物と同時に設計してもらうことが重要になります。外構を引き渡し後に別業者へ発注すると、この連携が取れません。
- 大開口の構造条件と、開けた場合の耐震等級
- UA値・C値の実測値とZEH基準に対する余裕
- 和室の畳の種類(こたつ使用に耐えるか)
- 和室のコンセント位置(部屋の中央付近に取れるか)
- 和室とリビングの段差(フラット/小上がり)と将来の転用
- タイルデッキの高さ・水勾配・サッシ下の排水
- 夏の日射遮蔽(軒の出・庇・シェード)とタイルの照り返し対策
- 平屋の防犯対策(シャッター・防犯ガラス・センサーライト・外構の見通し)
大開口と和室はどちらも「設計で決まる」要素です。設備の話より、納まりと数字の話ができる担当者かを見てください。実例プランを図面で見せてもらうのが、いちばん確実な判断方法です。
関東エリアで平屋を検討する人へ|編集部メモ
関東エリアで110坪の土地となると、都市部からは離れた立地になります。その代わりに得られるのが、平屋・大開口・デッキという組み合わせです。土地が広ければ隣家との距離が取れ、大開口を開け放っても視線を気にせずに済みます。この家の主題は、その立地条件があって初めて成立しています。
気候面で押さえたいのは夏の日射です。関東の夏は日射が強く、大開口とタイルデッキはどちらも熱を取り込みやすい要素になります。深い軒、庇、外付けシェード。冬に光を入れて夏に遮るという設計が、同じ窓で両立できます。平屋は軒を出しやすい形なので、この点では有利です。加えて、タイルデッキは夏の日中に高温になるため、日射遮蔽があるかどうかで「使える時間」が大きく変わります。設計段階で必ず相談してください。
よくある質問
Q. 和室は作ったほうがいいですか?
「毎年必ず発生する用途」が1つ言えるなら作る価値があります。この家の「冬にこたつで過ごす」がその例です。逆に「一応あったほうがいい」で作った和室は、数年で物置になります。用途が決まれば必要な広さも決まり、こたつ+人が座る余白+通路で4.5帖、余裕を持つなら6帖が目安です。
Q. タイルデッキとウッドデッキ、どちらがいいですか?
タイルは初期費用が高い一方、塗装などのメンテナンスがほぼ不要で色や質感も長く変わりません。ウッド(天然木)は質感に優れますが数年ごとの塗装が必要です。毎日使う場所として計画するならタイルが有利。ただしタイルは夏の照り返しで高温になるため、軒や庇での日射遮蔽をセットで検討してください。
Q. 室内床とデッキの高さは揃えるべきですか?
揃えるとリビングが外へそのまま続いて見え、開放感は大きく上がります。ただし雨水が室内側に入りやすくなるため、わずかな水勾配とサッシ下の排水(グレーチングなど)をセットで設計する必要があります。設計者に「フラットにしたいが雨仕舞いはどうするか」と具体的に聞いてください。
Q. 平屋で独立型キッチンにすると暗くなりませんか?
平屋は外周に面する機会が多いため、2階建てより窓を取りやすいという利点があります。独立型でも採光を確保しやすいのは平屋の強みです。ただし配膳距離には注意が必要で、ダイニングまで3歩以内が理想、5歩を超えるとストレスになります。プランの段階で実寸を確認してください。
Q. 同じ住友林業の事例をもっと見るには?
いえスタでは施工会社別に事例を絞り込めます。住友林業の家アカ一覧から、間取り・坪数・テイスト別に比較できます。平屋と2階建て、規格型と自由設計で仕上がりが違うので、複数見比べると判断材料が増えます。
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編集後記
「冬にこたつを置いて過ごしたくて、和室をつくりました」。
この一文の順番が、とても好きです。和室を作った、ではなく、こたつで過ごしたかった。目的が先にあって、部屋はその手段として出てくる。
家づくりの打ち合わせは、どうしても部屋の名前で進みます。和室は要りますか、書斎は要りますか、ランドリールームは要りますか。そう聞かれると、要る/要らないで答えるしかない。でも本当に決めるべきは「どこでどう過ごしたいか」のほうです。
この家には、冬にこたつでぬくぬくする場所と、それ以外の季節に外へ出ていく場所の両方があります。1年を通して同じ場所にいなくていい家。32坪という面積の使い方として、これはかなり贅沢で、気持ちのいい配分だと思います。
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