シューズクロークは、いえスタが取材した家アカ100軒のうち58軒が採用している多数派の設備です。ただし、多くの記事がすすめる「玄関から室内へ通り抜けるウォークスルー型」を選んだ家は、そのうちわずか4軒でした。
この記事では、実際に建てた100軒のデータをもとに、シューズクロークの後悔が「畳数」ではなく「棚が何メートル取れるか」と「入口の位置」で決まることを、実寸と計算で説明します。打ち合わせ前に数えておくべき数字も最後にまとめました。
シューズクロークは100軒中58軒。でもウォークスルー型は4軒だけ
いえスタでは、実際に注文住宅を建てた施主のInstagram(家アカ)を取材した記事165本を保有しています。そのうち玄関まわりの記述をすべて拾い出し、100軒に換算した内訳がこちらです。
| 玄関まわりの仕様 | 100軒中 |
|---|---|
| シューズクローク(SIC)を設けた | 58軒 |
| うちウォークスルー型(通り抜けできる) | 4軒 |
| 土間・土間収納に言及 | 9軒 |
| 玄関とパントリーを近づけた | 8軒 |
| 玄関の近くに洗面・手洗いを置いた | 13軒 |
| 玄関を2つに分けた(家族用+来客用) | 1軒 |
「シューズクロークといえばウォークスルー」という前提で書かれた記事はとても多いのですが、実際に選ばれているのは行き止まりのウォークインでした。これは好みの問題ではなく、面積の話で説明がつきます。

後悔の正体は「畳数」ではなく「棚が何メートル取れるか」
靴30足に必要な棚は、およそ7メートル
可動棚1段(幅90cm・奥行35cm)に並ぶ大人の靴は、実際に置いてみると4足程度です。子どもの靴なら6足入ります。家族の靴の総数は、大人1人8〜12足・子ども1人4〜6足として、4人家族で25〜35足あたりに落ち着きます。
30足 ÷ 4足 = 8段。幅90cmの棚で8段、つまり棚板の総延長で約7.2mが必要という計算になります。
ここが最初のつまずきどころです。「2畳あれば十分」と聞いて2畳を確保したのに、間取りが固まってから棚は片側1面しか付けられないと分かり、総延長が4mちょっとしかなかった——という順番で後悔が起きます。畳数は先に決まるのに、棚の段数は最後に決まるからです。
型・広さ別「棚の有効延長」早見表
シューズクロークの収納量は、面積ではなく棚を付けられる壁が何面残るかで決まります。そして入口の数だけ壁は減ります。
| 型・広さ | 棚を付けられる壁 | 棚の総延長(5段) | 靴の目安 |
|---|---|---|---|
| 玄関土間の壁面棚(幅1.2m・0畳) | 1面/1.2m | 6.0m | 約25足 |
| ウォークイン 1.5帖 | 2面/1.8m+0.9m | 13.5m | 約55足 |
| ウォークイン 2帖 | 2面/1.8m+1.8m | 18.0m | 約70足 |
| ウォークスルー 2帖 | 1面/1.8m | 9.0m | 約35足 |
| ウォークスルー 3帖 | 2面/2.7m+0.9m | 18.0m | 約70足 |
同じ2帖でも、ウォークインとウォークスルーで収納量は倍近く違います。ウォークスルーは入口が2か所あるぶん壁が減り、さらに通り抜けるための通路幅が必要になるためです。
ウォークスルーで両面棚を取るなら、内寸の幅150cm以上
通り抜ける通路は、廊下と同じ75〜80cmは欲しいところです。奥行35cmの棚を両側に付けるなら、35+80+35=150cm。内寸で1.5m確保できないと、ウォークスルーは自動的に片面棚になります。
1.5帖(内寸およそ1365mm)では片面が限界。2帖(1820mm)でようやく両面が成立します。100軒でウォークスルーが4軒にとどまっているのは、この面積の壁を越えられた家が少なかった、という単純な話です。
逆に、行き止まりのウォークインなら人が立てる60cmが確保できれば足ります。1.5帖でも両面棚が入る。「狭いからウォークインにした」のではなく、1.5帖で収納量を最大化する答えがウォークインだったと読むほうが正確です。

シューズクロークを作った家に共通していた3つのこと
シューズクロークを設けた58軒と、設けなかった家を並べて比べると、はっきり差が出た項目があります。
| 項目 | シューズクロークあり | なし |
|---|---|---|
| パントリーがある | 67% | 49% |
| ファミリークローゼットがある | 62% | 44% |
| 回遊動線を採用 | 56% | 37% |
| 延床の中央値 | 35坪 | 35坪 |
まず見てほしいのは最後の行です。延床の中央値は、シューズクロークを作った家も作らなかった家も同じ35坪でした。つまりシューズクロークは「家を大きくして足した部屋」ではなく、どこかの面積を移してきた結果です。家の広さで後悔したのはどこかを調べたときも同じ傾向が出ていて、坪数を増やすより配分を変えた家のほうが満足度が高い、という話とつながります。
上の3行が示しているのは、シューズクロークが単体では機能していないということです。パントリー・ファミリークローゼットとセットで「収納を家中に分散させた家」の一部としてシューズクロークがある。玄関にだけ大きな収納を作っても、そこに全部が集まってくれるわけではありません。収納計画全体の考え方を先に決めてから玄関に降りてくる順番のほうが、結果的にうまくいっています。
実例で言うと、32坪・3LDKのtakenoko__houseさんの家は、ウォークインクローゼット/シューズクローク/ファミリークローゼット/階段下収納/リビング収納と、性格の違う収納を5か所に分けています。施主自身が「何をどこにしまうか」を先に決めたと語っているのが印象的でした。5人家族のnabe_chan_homeさんの家(42坪)も収納を5か所に分散させたうえで、「シューズクロークを設けるなら1.5〜2帖は確保したい」と具体的な数字を残しています。
靴より荷物。シューズクロークが本当に効くのは「買い物動線」
家アカを読んでいて意外だったのは、シューズクロークの話が靴で終わっていないことでした。玄関とパントリーを近づけた家は100軒中8軒と決して多くありませんが、その8軒はほぼ全員が理由に「買い物の荷物」を挙げています。
- ki_n_ieさんの家(40坪・4LDK・5人家族)は、こだわりの一番目に「玄関からすぐパントリー」を挙げています。
- moyori_no_ieさんの家(28坪・3LDK)は、パントリーを通り抜けてキッチンから玄関へ出られる形にしました。28坪でもこの動線は成立します。
- xyupixさんの家(61.1坪)は、来客用の玄関とは別に約2.6帖のシューズクロークを備えた家族用玄関を設け、そこからパントリーを通ってキッチンへ直行できます。
3軒に共通しているのは、シューズクロークを「靴をしまう部屋」ではなく「外から持ち込んだものを、室内に入れる前に一度置く場所」として設計している点です。この使い方をするなら、玄関側の入口だけでなく、パントリーやキッチンとの位置関係を先に決めておく必要があります。生活動線の考え方や家事ラク動線の実例10選もあわせて見ておくと、玄関から先の流れがイメージしやすくなります。
逆に言えば、シューズクロークを玄関の端に「靴だけ」で置くと、面積のわりに毎日の効きが弱くなります。100軒のデータで採用率58軒という数字の内訳には、うまく効いている家とそうでない家が両方入っている、というのが正直なところです。

ちなみに玄関収納は、会社によって標準仕様の差がいちばん出やすい場所のひとつです。可動棚が標準か有償オプションかで数十万円変わることもあるので、候補が2〜3社に絞れてきたら資料を取り寄せて標準仕様を見比べてみてください(無料・しつこい営業はありません)。図面より先に、ここを比べておくと後の打ち合わせが早くなります。
よくある後悔5パターンと、回避のしかた
1. 畳数を決めて、棚の段数を決めなかった
既製の下駄箱をやめてシューズクロークにしたのに、棚が足りず結局玄関に靴が出ている。いちばん多い形の後悔です。畳数を決める打ち合わせの前に、家族の靴を実際に数えて、先ほどの「4足=1段」で段数から逆算しておくと防げます。数えると、たいてい想像より多いです。
2. ウォークスルーにしたら、棚が片面しか取れなかった
内寸150cmの話です。通り抜けを取るか、収納量を取るか。両方欲しいなら3帖必要になり、その1帖をどこから持ってくるかという話になります。100軒のデータを見るかぎり、多くの家がここで「通り抜けを諦める」判断をしていました。
3. 入口が玄関の正面にあって、中が丸見え
扉を付けるかどうかで悩む人が多いのですが、扉より効くのは入口の位置をずらすことです。玄関ドアを開けた人の視線の延長線上から外して90度振るだけで、生活感は視界から消えます。扉を付けると、荷物を持った状態で開け閉めが必要になり、結局開けっ放しになる家も少なくありません。
4. コンセントがない
電動自転車のバッテリー、除湿機、シューズドライヤー、掃除機の充電。シューズクロークは家の中でもコンセントの必要性が想像しにくく、しかも後から足しにくい場所です。図面の段階で1か所だけでも入れておくと効きます。コンセントの位置と数で後悔した実例でも、玄関まわりは上位に入っていました。
5. シューズクロークに面積を取られて、玄関土間が狭くなった
玄関土間の幅は、家族が並んで靴を脱げるかどうかで決まります。そしてその土間は「玄関の面積からシューズクロークを引いた残り」です。両方の数字を同時に見ないと、収納は充実したのに朝の出発時だけ渋滞する玄関ができあがります。土間の幅は最低でも1.2m、家族4人以上なら1.5mは見ておきたいところです。
補足:においと湿気は、思っているほど優先度が高くないかもしれない
シューズクロークの記事にはほぼ必ず「におい・湿気対策」の章があります。ただ、100軒の取材のなかで、施主自身がにおいや換気を玄関まわりの話題として語ったのは1軒だけでした。気にしなくていいという意味ではなく、実際に住んでいる人の体感では、上の5つより優先順位が下ということだと読んでいます。
それでも対策するなら、窓より換気扇が確実です。小窓を付けても、玄関の窓は結局あまり開けません。24時間換気の経路にシューズクロークを含めてもらえるか、設計士に一度聞いてみてください。つけて後悔した設備・よかった設備のデータでも、玄関まわりの換気設備は「あってよかった」より「なくても困らなかった」寄りの評価でした。
打ち合わせ前に決めておく4つの数字
設計士との打ち合わせは、こちらが数字を持っているかどうかで進み方が変わります。玄関の話をする前に、この4つだけメモしておいてください。
- 家族全員の靴の総数——今ある靴を実際に数える。玄関に出ている分と、しまってある分の合計。
- 棚に載らない大物のリストと実寸——ベビーカー、自転車、ゴルフバッグ、スーツケース、キャンプ用品、七五三の三輪車まで。これが床置きスペースの必要量になります。
- シューズクロークの入口の位置——玄関ドアから見えるか。キッチン側とつなぐか。この2つで型が決まります。
- シューズクロークを引いたあとの、玄関土間の幅——1.2m以上あるか。
この4つを持って行くと、「シューズクロークは何畳がいいですか」ではなく「棚の総延長を7m取りたいので、この形は成立しますか」という聞き方ができます。同じ打ち合わせ時間でも、出てくる図面がまったく変わります。家アカ100軒の後悔TOP10を見ても、後悔の多くは「決めなかったこと」から生まれていました。
まずは、他の家がどう解いているかを見てみる
玄関の正解は家族の持ち物の量で変わるので、他人の間取りをそのまま真似しても合いません。ただ「1.5帖でここまで入るのか」「28坪でもキッチンまで抜けられるのか」という実例を数軒見ておくと、自分の家の判断がぐっと速くなります。間取りタイプで実例を探すから、近い延床・家族構成の家を探してみてください。
そのうえで、気になる会社が出てきたら資料を取り寄せて比べてみてください。玄関収納の標準仕様は会社ごとにかなり違い、可動棚が標準か有償オプションかで数十万円変わることもあります。資料請求は無料・しつこい営業はありませんので、比較の材料として気軽に使ってもらえたらと思います。
玄関は、家族が1日2回必ず通る場所です。畳数ではなく棚の長さで話を始めるだけで、後悔の大半は避けられます。


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