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北道路の旗竿地。土地探しの条件表では、たいてい真っ先に外される組み合わせです。それでも @misa_kurashi365 さんは「余白をつくる家」というコンセプトを掲げ、吹き抜けとプライベートテラスで明るさを取りにいっています。不利な条件を、間取りで反転させるという家づくりです。
北道路の旗竿地には、はっきりした弱点があります。南側に他人の家が建つため直射日光が入りにくく、竿の部分(細い通路)に駐車すると使える敷地はさらに狭くなる。土地の価格が安いのには理由があります。
一方で、あまり語られない利点もあります。道路から奥まっているので、通行人の視線が入らない。カーテンを開けたまま過ごせる、庭に出ても人目を気にしなくていい——整形地では意外に得にくい環境です。
この家のコンセプトが「余白をつくる」であることは、その利点と正確に噛み合っています。吹き抜けで上から光を取り、プライベートテラスで外部空間を確保する。南から光が入らないなら上から、庭が見られるなら囲えばいい。いえスタ編集部はこの家を「土地の弱点を、間取りの前提に置き換えた家」と読みました。
施主のこだわりポイント
「余白をつくる家」をコンセプトに、家づくりを進めています。北道路の旗竿地ですが、吹き抜けとプライベートテラスのある明るい家にしたいと思っています!
— @misa_kurashi365 さんの投稿より、編集部が引用
編集部メモ:この家を一言で言うと
「不利な土地を、先に受け入れて設計した家」。
土地の条件は、家を建てる時点でもう変えられません。だからこそ、弱点を後から工夫で埋めるのではなく、最初から前提として設計に組み込むほうが結果は良くなります。
この家の場合、その前提は「南からの直射日光は期待できない」です。だから吹き抜けを入れて、隣家の屋根より高い位置から光を落とす。「庭は道路から見える」という前提がないので、テラスを囲ってプライベート化する。どちらも、条件が違えば選ばなかったかもしれない選択です。
そして30坪で4LDK。決して余裕のある配分ではありませんが、収納3種類とワークスペースを確保しています。「余白」というコンセプトは、面積の余りではなく、意図してつくるもの——この家はそう言っているように読めます。
編集部が注目した3つのポイント
1. 北道路の旗竿地で、光は「南」ではなく「上」から取る
南側に隣家がある土地では、1階の南窓から入る光は限られます。ここで無理に大きな南窓を取ると、光は入らないのに熱だけ逃げる窓になりかねません。
この家が吹き抜けを選んでいるのは、光の取り方を水平から垂直に切り替える判断です。隣家の屋根より高い位置に窓を設ければ、南側が塞がっていても光は届きます。旗竿地・北道路・密集地では、吹き抜けは開放感のための装置ではなく採光の装置です。
効果を出すには2つ条件があります。ひとつは吹き抜けの窓の向き。南が塞がっているなら、東・西・あるいはトップライトを検討します。もうひとつは光が落ちる先に白い面があること。吹き抜けの壁が白ければ、反射で1階の奥まで明るさが回ります。
注意点として、吹き抜けは2階の床が減るので、30坪で4LDKという条件では設計の腕が要ります。吹き抜けを小さくしすぎると採光効果が出ず、大きくしすぎると部屋が入らない。プランを見るときは、吹き抜けの畳数と2階の各部屋の広さを一緒に確認してください。
2. プライベートテラスは、旗竿地だからこそ成立する
建物や塀で囲われた屋外空間をプライベートテラスと呼びます。整形地の場合、道路や隣家からの視線を切るために追加の塀や目隠しが必要になり、そのぶん費用がかかります。
旗竿地はもともと道路から奥まっていて、周囲を建物に囲まれているため、この条件を土地が最初から満たしています。同じテラスでも、必要な目隠しの量が違う。弱点として語られる「奥まっている」が、そのまま利点に変わる場所です。
作るときのポイントは、リビングと段差なくつなげることです。掃き出し窓の外に、床と近い高さでテラスを設けると、視覚的にリビングが広がって見えます。30坪という規模では、この「外に抜ける感覚」が体感の広さを大きく左右します。
もう一点、洗濯物を干す場所として計画に入れるかどうかを先に決めてください。プライベートテラスは人目を気にせず干せる場所でもありますが、くつろぐ場所と兼用にすると、生活感で使わなくなることがあります。この家がウッドデッキ・テラスと家事ラク動線の両方を挙げているので、そのあたりは整理されているはずです。
3. 30坪4LDKで、収納3種類とワークスペースを確保している
4人家族で4LDK。30坪という延床に対して部屋数は多めで、居室以外に回せる面積は多くありません。それでもウォークインクローゼット、シューズクローク、リビング収納の3種類と、ワークスペースを確保しています。
これができるのは、収納を「部屋」ではなく「壁面」として計画している場合です。独立した納戸を作ると数坪必要ですが、リビング収納やシューズクロークは壁面と動線の一部として組み込めます。30坪クラスでは、この考え方でないと収納は入りません。
ワークスペースについても同様です。個室として1部屋割くのではなく、階段横、廊下の一角、リビングの端に1.5〜2畳分を作るのが現実的です。この家が「ワークスペース付き」と「書斎・ワークスペース」の両方を挙げているのは、そうした小さな作業場所が確保されているということでしょう。
再現するなら、幅は最低120cm、奥行きは60cmを目安に。これ以下だとノートPCと書類が同時に置けず、結局ダイニングテーブルで作業することになります。コンセントの位置も忘れずに指定してください。
この家から学べる、条件の悪い土地で後悔しない3つの判断軸
判断軸1:土地の弱点は「埋める」のではなく「前提にする」
南から光が入らない土地に、南向きの大きな窓を無理に取る。これが典型的な失敗です。弱点を打ち消そうとすると、コストばかりかかって効果が出ません。
正しいのは、条件を認めたうえで別の手を打つこと。南が塞がっているなら上から採光する、庭が狭いならテラスで囲う、車が停めにくいなら駐車を優先して玄関位置を決める。土地を選んだ時点で、間取りの前提の半分は決まっています。そこから設計を始めるほうが、結果的に安く快適になります。
判断軸2:安い土地の差額を、性能と採光に回す
旗竿地や北道路の土地は、同じエリアの整形地より安く手に入ります。その差額をどこに使うかで、住み心地は変わります。
おすすめは断熱性能と、採光のための設備(吹き抜け・高性能な窓・トップライト)です。逆に、内装のグレードアップに回すと、暗い家のまま見た目だけ良くなります。土地で妥協したなら、建物では光と暖かさを買う。この配分が、条件の悪い土地でうまくいく家の共通点です。
判断軸3:「余白」は面積の余りではなく、先に取るもの
30坪4LDKで余白を作るのは簡単ではありません。部屋を詰めていけば、余白は自動的に消えます。
この家がコンセプトとして掲げているように、余白は最初に確保するものです。吹き抜け、テラス、ワークスペース。どれも「部屋が全部入ったあとに余ったら」では手に入りません。優先順位の上位に置いて、そこから部屋を詰める。順番を逆にできるかどうかが分かれ目です。
延床30坪・土地42坪(旗竿地)という条件を読む
延床30坪の2階建てに、土地42坪。しかも旗竿地なので、竿の部分を除いた有効面積はさらに小さくなります。この条件を数字で整理します。
旗竿地は「竿」の面積が使えないと考える
旗竿地の敷地面積には、道路までの細い通路部分(竿)が含まれます。ここは建物を建てられず、実質的には駐車とアプローチにしか使えません。幅2〜3m×長さ5〜15mとすると、3〜10坪前後。42坪の土地なら、旗の部分は32〜39坪程度と見るのが現実的です。
土地を検討する段階では、「敷地面積」ではなく「旗の部分の面積と形」で判断してください。図面上の坪数だけで比較すると、整形地との差を読み違えます。
30坪4LDKは、居室を優先すると収納が消える
4LDKの標準構成に必要なのは28〜32坪。30坪はぎりぎりの下限です。ここに吹き抜けを入れると、2階の床がさらに減ります。
成立させる鍵は、廊下の圧縮と、収納を壁面化することです。この家が独立した納戸を持たず、ウォークインクローゼット・シューズクローク・リビング収納という動線に組み込める3種類を選んでいるのは、その解き方でしょう。
テラスは坪数に効かないのに、体感を大きく変える
プライベートテラスは屋外なので延床には算入されません。2〜3坪の外部空間が、リビングの延長として機能する。坪単価を払わずに使える面積という意味で、狭小地ほど価値が上がります。
ただし、外構工事として費用はかかります。デッキ材、囲い、排水。建物本体の見積もりとは別枠なので、資金計画の段階から外構費を分けて確保しておいてください。ここを後回しにすると、引き渡し後に「テラスは来年」となり、そのまま数年経ちます。
4人家族が、この家の設計を再現するには
4人で30坪4LDK。部屋数は足りていますが、一部屋あたりは広くありません。使い方で差が出るポイントを挙げます。
子ども部屋は「小さく作って、共用部を広く」
30坪4LDKでは、子ども部屋を6帖ずつ取ると他が圧迫されます。4.5帖でも、収納が別にあり、勉強場所がリビングにあれば十分機能します。
この家がワークスペースと吹き抜けのある広いリビングを持っているのは、その方向の設計と読めます。子どもが小さいうちは共用部で過ごす時間が長く、個室が本当に必要になるのは中学生以降。その時期に必要十分な広さで足ります。
シューズクロークは4人家族でこそ効く
4人分の靴、傘、上着、子どもの外遊び道具、ベビーカー。玄関に集まる物の量は人数に比例します。シューズクロークがないと、玄関が常に散らかった状態になります。
目安は1.5〜2帖。可動棚にしておけば、子どもの成長で変わる荷物に対応できます。土間続きにしておくと、汚れたものをそのまま置けて使い勝手が上がります。
吹き抜けの音は、4人家族では計算に入れる
吹き抜けは光と一緒に音も通します。1階のテレビの音が2階に届き、2階の話し声が1階に降りてくる。家族が多いほど、この影響は大きくなります。
対策は難しくありません。寝室や子ども部屋を吹き抜けに面させない配置にする、面する場合はドアの遮音性を上げる。プランの段階で「吹き抜けに面する部屋はどれか」を確認しておけば、避けられる問題です。
ヤマト住建で建てるときに押さえたいこと
ヤマト住建は高気密高断熱を主力に掲げる住宅会社です。採光が取りにくい土地では、断熱性能が体感温度に直結するため、相性としては悪くありません。確認したい点を挙げます。
旗竿地・北道路の施工実績を具体的に聞く
条件の悪い土地は、設計の腕がそのまま結果に出ます。「旗竿地で建てた実例プランを見せてください」と頼むのが最短です。採光をどう解いているか、駐車と玄関の関係をどう処理しているかが、図面を見れば分かります。
加えて、竿の部分の幅と長さで工事費が変わることがあります。重機や資材の搬入が難しい場合、その分の割増が発生します。見積もり時に「旗竿地であることによる追加費用」を明示してもらってください。
吹き抜けの採光シミュレーションを出してもらう
「吹き抜けを作れば明るくなります」ではなく、実際にどの時間帯にどれくらい光が入るかを確認してください。周辺の建物の高さを入れた日照シミュレーションを出せる会社なら、提案の精度が違います。
あわせて、UA値・C値の実測値も聞いておきます。吹き抜けは性能が伴わないと冬の足元が冷えます。
外構(テラス)を本体見積もりと一緒に出してもらう
プライベートテラスは外構工事です。本体価格には含まれないことがほとんどなので、資金計画の段階から分けて確保してください。デッキ材の種類(天然木か樹脂か)でメンテナンス周期も費用も変わります。
- 旗竿地・北道路での施工実績と実例プラン
- 竿部分の幅・長さによる工事費の割増の有無
- 吹き抜けの採光シミュレーション(周辺建物の高さを含む)
- UA値・C値の実測値と、吹き抜けを含む冷暖房計画
- 30坪4LDKで収納3種類を成立させたプラン例
- プライベートテラスを含む外構の見積もり(本体と分けて)
- ワークスペースの寸法(幅120cm・奥行60cm以上)とコンセント位置
- 吹き抜けに面する部屋と、音への配慮
条件のある土地では、提案してくる図面の枚数より、条件をどれだけ具体的に指摘してくるかで会社の力が分かります。上のチェックリストは、その見極めにそのまま使えます。
関東エリアで旗竿地を検討する人へ|編集部メモ
関東の市街地では、旗竿地は珍しくありません。同じエリアの整形地より2〜3割安く手に入ることもあり、立地を優先したい人にとっては現実的な選択肢です。駅から近い場所に予算内で建てたい場合、旗竿地を外すと候補がほとんど残らない、ということも起こります。
検討するときに現地で必ず確認したいのが3点あります。①竿の幅(車の出し入れができるか、幅2.5m以上が目安)②南側の建物の高さと距離(吹き抜けで光が届くか)③電柱と隣家の窓の位置。とくに③は、テラスを囲う位置を決めるうえで効いてきます。加えて、関東は夏の日射が強いので、吹き抜けから光を入れるなら遮蔽(庇・ブラインド・Low-Eガラスの種類)も同時に検討してください。冬に光が欲しい家ほど、夏の対策が必要になります。
よくある質問
Q. 北道路の旗竿地でも明るい家は作れますか?
作れますが、採光の取り方を最初から変える必要があります。南の窓に期待せず、吹き抜けやトップライトで上から光を落とす、あるいは中庭・テラスから間接的に採り込む。この前提でプランを描いてもらえるかが、会社選びの分かれ目です。周辺建物の高さを入れた日照シミュレーションを出してもらうと、判断材料がはっきりします。
Q. 旗竿地のデメリットは他にありますか?
主なものは3つです。①竿の部分に駐車すると来客用のスペースが取りにくい ②重機や資材の搬入が難しく工事費が割増になることがある ③将来売却するときに買い手が限られる。①と②は事前に確認できます。③は価格に織り込まれているので、長く住む前提なら大きな問題にはなりません。
Q. プライベートテラスは費用がかかりますか?
外構工事なので本体価格とは別枠です。デッキ材の種類で幅がありますが、天然木は数年ごとの塗装が必要、樹脂系は初期費用が高いかわりにメンテナンスがほぼ不要という違いがあります。旗竿地は周囲が建物に囲まれているぶん、目隠しの追加が少なくて済むケースが多く、その点では有利です。
Q. 30坪で4LDKは狭くありませんか?
一部屋あたりは広くありません。ただし子ども部屋を4.5帖程度に抑え、共用部と収納を優先する配分にすれば十分成立します。この家がワークスペースと吹き抜けのあるリビングを持っているのは、その方向の設計です。個室に広さを求めるか、共用部に求めるかを先に決めてください。
Q. 同じヤマト住建の事例をもっと見るには?
いえスタでは施工会社別に事例を絞り込めます。ヤマト住建の家アカ一覧から、間取り・坪数・テイスト別に比較できます。同じ会社でも土地条件によって解き方が違うので、複数見比べると自分の土地での可能性が見えてきます。
同じ条件の家アカをもっと見る
編集後記
@misa_kurashi365 さんの投稿は、まだ完成前の家について書かれています。「明るい家にしたいと思っています!」という、進行中の言葉です。
家づくりの記録として面白いのは、こういうまだ答えが出ていない段階の言葉だと思います。完成後の「やってよかった」は結果ですが、途中の「こうしたい」には、その人が何を大事にしているかがそのまま出ます。
北道路の旗竿地という条件を隠さずに書いたうえで、「余白をつくる家」というコンセプトを掲げている。条件を認めたうえで、それでも譲らないものを決めている——この順番で家づくりを進められる人は、たぶん完成後の満足度も高くなります。完成が楽しみな一軒です。
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