
大黒柱を中心に、土間・和室・リビングがひと続きになる。@napinoie さんの家は、6帖の土間という「内であり外でもある場所」を家の真ん中に置いた、延床42坪・4LDKの和モダン住宅です。
中部エリアで福工房が手がけた、ナチュラル×和風テイストの2階建て。4人家族が暮らす、延床42坪・土地87坪の住まいです。福工房は「土間のある家」を看板に掲げる住宅会社で、この家はその特徴がもっとも分かりやすく出た事例と言えます。勾配天井のLDK、小上がり、ひのきの床、そして全館空調。木の質感と温熱環境の両方に投資しているのが、この家の骨格です。
施主のこだわりポイント
大黒柱を中心に土間、和室、リビングが繋がる開放的な空間。
内であり、外でもある広々とした6帖の土間。勾配天井が開放的な、小上がりがあるLDK。全館空調とひのきの床で一年中快適です。
— @napinoie さんの投稿より、編集部が引用
編集部メモ:この家を一言で言うと
「土間を、通路ではなく居場所にした家」です。
土間は本来、靴のまま作業する実用の場所でした。この家はそこに6帖という面積を与え、大黒柱と和室・リビングをつなぐ家の中心に据えています。玄関から続く通路ではなく、そこに人が留まる。しかも全館空調で温度が安定しているので、寒くて使えない土間になっていない。昔ながらの間取りを、いまの温熱性能で使えるようにした——そういう組み立て方の家です。
編集部が注目した3つのポイント
1. 6帖の土間は「面積」ではなく「つながり方」で効く
土間を作る家は増えていますが、多くは玄関の延長として2〜3帖です。この家は6帖を確保し、しかも大黒柱を挟んで和室とリビングの両方につながっている。この配置が重要です。土間が行き止まりだと、自転車や道具を置くだけの物置になります。両側に部屋が接していると、土間で作業する人と室内にいる人の会話が成立するので、居場所として使われ続けます。
設計で確認すべきは、土間と室内の段差の高さです。段差が大きいほど心理的な境界が強くなり、行き来が減ります。腰かけられる高さ(35〜45cm程度)にしておくと、段差そのものがベンチとして機能し、土間の使用頻度が上がります。
2. 大黒柱は「構造」ではなく「視線の基準点」として置く
現代の木造住宅では、大黒柱がなくても構造は成立します。それでも置く価値があるのは、空間の中心が決まるからです。土間・和室・リビングという性格の違う3つの空間が一続きになると、間延びして落ち着かなくなりがちですが、中心に太い柱が1本あるだけで視線がそこに集まり、空間が締まります。
採用する場合は、樹種と見付け寸法(見える面の太さ)を確認してください。細すぎると存在感が出ず、太すぎると通行の邪魔になります。あわせて、経年で色が濃くなる樹種かどうかも聞いておくと、10年後の見え方まで想像できます。
3. 勾配天井 × 全館空調 × ひのきの床という組み合わせ
勾配天井は上部に空間が増えるぶん、暖気が溜まり、冷房が効きにくくなります。この家が「一年中快適」と言えているのは、全館空調で家全体の温度を揃えているからです。勾配天井を採用したいなら、空調計画とセットで決めるのが鉄則になります。
ひのきの無垢床は、素足での感触と香りが魅力ですが、湿度の変化で伸縮します。全館空調で湿度が安定していると、隙間や反りが出にくくなるため、この組み合わせは理にかなっています。逆に、無垢床だけ入れて空調を普通のエアコンで済ませると、冬に隙間が目立つことがあります。素材と設備はセットで考える——この家はその見本です。
この家から学べる、和モダン × 高性能を両立させる3つの判断軸
判断軸1:木の量は「見える面積」で決める
和モダンは木を使えば使うほど良くなるわけではありません。床・柱・建具・家具のうち、どこを木にするかを決めるのが先です。この家は床(ひのき)と大黒柱という「触る場所」と「視線の中心」に木を集中させ、壁は白系で抜いています。全部を木にすると和風寄りに、絞ると和モダン寄りになる。面積の配分がテイストを決めます。
判断軸2:土間・小上がり・勾配天井は「掃除の手数」で選ぶ
この3つはどれも段差や高低差を生みます。暮らしの満足度は高い一方、ロボット掃除機が使えない・照明の交換に脚立が要るといった手間が増えます。採用するなら、掃除の動線を先に想像してください。小上がりは高さ35〜40cm程度なら段差収納として使え、腰かけにもなるので、実用と両立しやすい高さです。
判断軸3:全館空調は「故障したとき」を聞いてから決める
全館空調は快適性が高い反面、1台で家全体をまかなうため、止まると家全体が影響を受けます。検討するときは、機器の寿命(一般に10〜15年)、交換費用の目安、故障時の応急対応、フィルター清掃の頻度を確認してください。ここを聞かずに導入すると、10年後に想定外の出費になります。
延床42坪・土地87坪という広さの使い方
延床42坪は4LDKとしてはゆとりがある広さです。土地87坪と合わせて、この家がどこに面積を配分しているかを見ていきます。
42坪で6帖の土間を取るという判断
6帖は延床のおよそ7%にあたります。この面積を居室ではなく土間に振ったのが、この家の性格を決めています。同じ42坪で部屋数を優先すれば5LDKも可能ですが、そうしなかった。家づくりでは「何を作るか」より「何に面積を譲るか」のほうが暮らしを左右します。
土地87坪は「庭と駐車場と余白」を同時に持てるサイズ
建物42坪・2階建てなら建築面積はおよそ21〜25坪。土地87坪なら、駐車場2〜3台と庭を確保してもまだ余白が残ります。土間のある家は、外から直接土間へ入る動線が作れると価値が跳ね上がります。庭・土間・リビングが一直線につながるかどうか、配置図の段階で確認する価値があります。
ワークスペースと回遊動線を42坪に収めるコツ
この家はワークスペースと回遊動線の両方を持っています。回遊させると壁と面積を消費するので、40坪前後で両立させるにはワークスペースを個室にしないのが定石です。リビングやホールの一角にカウンターを設ける形なら、1〜2帖で成立します。
小さな子どもがいる家庭が、この家の設計を再現するには
子どもが小さいうちは、家の中の道具がいちばん増える時期です。この家の設計から取り出せる考え方を3つに整理します。
土間は「ベビーカーと三輪車の置き場」から始まる
小さい子がいる家で土間がもっとも活きるのは、外で使うものを家に入れずに済む点です。ベビーカー、三輪車、砂場道具、長靴。これらを玄関に置くと散らかりますが、6帖の土間があれば全部収まります。子どもが大きくなれば、自転車やアウトドア用品の置き場に変わっていく。用途が入れ替わっても使い続けられるのが土間の強さです。
小上がりは「昼寝と見守り」に効く
LDKの小上がりは、赤ちゃんを寝かせても床のホコリが届きにくく、料理をしながら視界に入ります。段差があるぶん、ハイハイ期の移動範囲を自然に区切れるのも利点です。将来は座る場所・作業する場所として使えるので、子育て期だけの設備になりません。
ひのきの無垢床は「傷を受け入れる」と決めてから選ぶ
ひのきは杉より硬いとはいえ、無垢材である以上おもちゃを落とせば傷はつきます。ただ、無垢材の傷は補修が効くのが利点で、軽い凹みなら水と熱で戻せることもあります。傷を「味」として受け入れられるかどうかが分かれ目です。神経質になりそうなら、木目調のシート系フローリングを選んだほうが後悔しません。
福工房で建てるときに押さえたいこと
福工房は「土間のある家」を看板に掲げる住宅会社で、静岡を拠点に複数エリアで展開しています。土間や無垢材を前提にした提案に慣れているぶん、この家のような設計は得意分野だと考えられます。打ち合わせで確認しておくと判断が早くなるポイントを挙げます。
- 土間の仕上げ(モルタル・タイル・洗い出し)ごとの費用と、ひび割れの考え方
- 土間に床暖房や空調の吹き出しを入れられるか(冬の使用頻度に直結)
- 大黒柱の樹種・寸法と、経年での色の変化
- 無垢床の樹種と塗装(オイル/ウレタン)、メンテナンスの頻度
- 全館空調の機種・想定寿命・交換費用・フィルター清掃の頻度
- 勾配天井にした場合の照明計画と、電球交換の方法
土間と無垢材は、会社によって得意・不得意がはっきり分かれる分野です。施工事例を見せてもらうときは、写真ではなく築5年以上の家を見せてもらうと、経年の姿が分かります。
中部エリアで土間のある和モダン住宅を検討する人へ|編集部メモ
中部エリアは、内陸と沿岸で気候がかなり異なります。沿岸部は冬でも比較的温暖な一方、塩害と強風への配慮が要ります。内陸に行くほど冬の冷え込みが厳しくなるので、土間を居場所として使うなら床下断熱・基礎断熱のどちらを採るかが効いてきます。土間は地面に近いぶん、断熱の仕様で体感温度が大きく変わる場所です。
また、無垢材や土間を扱う地域工務店が多いエリアでもあります。複数社から同じ条件で見積もりを取ると、標準仕様の差がはっきり見えます。「土間6帖」「無垢床」「全館空調」という3点を条件に揃えて比較すると、会社ごとの考え方の違いが出て選びやすくなります。
よくある質問
Q. 土間は寒くありませんか?
断熱の仕様しだいです。土間は地面に近いため、基礎断熱にするか床下断熱にするかで体感が変わります。この家のように全館空調で家全体の温度を揃えていれば、土間だけが極端に寒くなることはありません。逆に、断熱を検討せずに土間を作ると「冬は使わない場所」になりがちです。
Q. 6帖の土間は広すぎませんか?
通路としてしか使わないなら広すぎます。そこで何かをする前提——自転車の整備、園芸、アウトドア用品の手入れ、子どもの遊び場——があるなら6帖は妥当です。土間に置きたいものを紙に書き出して、必要な面積を積み上げてから決めてください。
Q. 大黒柱を入れると費用はどのくらい上がりますか?
樹種と寸法によって幅が大きく、数十万円規模になることもあります。構造上必要な柱を太くして見せる方法なら、追加費用を抑えられます。「意匠として1本足す」のか「必要な柱を見せる」のかで金額が変わるので、設計士に両方の見積もりを出してもらうのが実務的です。
Q. 全館空調と個別エアコン、どちらがいいですか?
勾配天井や吹き抜け、土間のように空間がつながっている家は全館空調と相性がいいです。一方、部屋を細かく仕切る間取りなら個別エアコンのほうが効率的で、故障時のリスクも分散します。この家は空間がつながる設計なので、全館空調を選んだ判断は理にかなっています。
Q. 同じ福工房の事例をもっと見るには?
いえスタでは建築会社ごとに家アカ事例をまとめています。同じ会社でも土地条件や家族構成で仕上がりは変わるので、複数の事例を並べて見ると、標準仕様で実現できる範囲がつかめます。
同じ条件の家アカをもっと見る
編集後記
@napinoie さんの家でいちばん面白いのは、古い間取りの部品を、新しい性能で復活させているところです。土間も大黒柱も小上がりも、昔の日本家屋にあったものです。ただ当時は、冬は寒く、掃除も大変だった。それを全館空調とひのきの床で「一年中快適」にしている。
懐かしさだけで昔の間取りを持ち込むと、暮らしにくい家になります。逆に性能だけを追うと、どこにでもある箱になる。好きな形を、いまの技術で使えるようにする。この順番で考えられると、家づくりはずいぶん自由になります。
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この家を建てた会社
福工房
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